家庭菜園の初心者〜中級者の方向けに、食用菊の育て方の手順を、写真とイラストでわかりやすく解説します。
延命楽や、もってのほかなどでの食用菊栽培方法、栽培時期、水やり、品種、病害虫への対策、栽培を成功させるポイントなどをご説明していきます。
・食用菊の栽培に適した環境
・栽培に必要な資材
・栽培に適した時期と収穫までの手順
・おすすめの品種
・よくある質問
・栽培のポイント
食用菊とは

食用菊は、食用に花の苦みなどを抑えて品種改良した菊のことを言います。
その歴史は古く、古代中国では長寿の漢方薬として、日本では江戸時代には薬として扱われ始め、その後は和え物や天ぷら、刺身のつまなどに使用されるようになりました。
代表的な品種としては、「もってのほか(紫花の菊)」、「阿房宮※あぼうきゅう(黄花の菊)」などがあります。
栽培期間は植え付けから100日前後で、地植え・プランターのどちらでも栽培することができます。
学名 | Chrysanthemum × morifolium syn. Chrysanthemum × grandiflorum Kitam. |
和名/別名 | 食用菊、料理菊 |
英名 | florist’s chrysanthemum |
科・属名 | キク科 |
主な栄養価 | カリウム/グルタチオン/イソクロロゲン/クロロゲン酸/βカロテン/ビタミンE・K・C・Aなど |
栽培難易度
★★★(難しい)
①土作り・畝作り
②苗木の購入と植付け
③支柱立て
④追肥・摘心
⑤収穫
食用菊栽培の特徴と適した環境
食用菊は、収穫までの期間はそれほど長くかからず、挿し芽から約4ヶ月、定植から約3ヶ月で育てることができます。畑はもちろん庭先のプランターでも育てることが可能です。
定植の時期としては、4〜6月(栽培エリアの気温差によって多少時期が異なる)の時期となり、〜20度が成育適温になります。
日当たりを大変好む性質の為、風通しや日当たりが良い場所を選んで育てましょう。
真夏の時期は、鉢を直接日光が当たらない半日陰の場所で育てましょう。
生育適温 | 15℃〜20℃前後 |
挿し芽〜収穫までの期間 | 約4ヶ月程度 |
連作障害 | 無し |
食用菊栽培で用意するもの
・畑などで直まきの場合
1.食用菊の苗木
2.苦土石灰
3.堆肥
4.化成肥料
5.支柱
※はじめての栽培時は苗木を購入する必要があります。親株をすでに持っている場合は不要です。
・堆肥については、以下の記事で詳しく説明しています。
堆肥とは何?堆肥の作り方(落ち葉・生ゴミ・牛ふん)
・プランターの場合
1.食用菊の苗木
2.鉢植えかプランター
3.花用培養土(菊用用土など)
4.支柱
5.液肥/肥料
[itemlink post_id=”2592″]
・家庭菜園で使用する道具ついては、以下の記事で詳しく説明しています。
家庭菜園で使用する道具と使い方
栽培に適した時期
食用菊の挿し芽から収穫までの栽培時期・栽培スケジュールは以下のようになります。
※品種によって若干異なる場合があります。

栽培方法/育て方の手順
1.苗木の購入と植え付け
ホームセンターや園芸店などで食用菊の苗木を購入したら、すぐに植え付けを行います。
苗木をポットから取り出して、一回り大きい鉢植えに用土を用意します。
2.食用菊に適した土づくり(地植えの場合)
①酸度調整

植え付けの2週間前に苦土石灰を多めにまいて土の酸度を調整し、よく耕しておきます。(目安:150g※3つかみ程度/㎡)
参考pH値 | 6.0-6.5 |
② 元肥を施す

植え付けの1週間前に堆肥2kg/㎡、化成肥料100g/㎡を施して深く耕して土を良くします。
この時、腐葉土があれば、土に混ぜ込んでおくと水はけの良い、菊栽培に適した土になります。
・堆肥については、以下の記事で詳しく説明しています。
堆肥とは何?堆肥の作り方(落ち葉・生ゴミ・牛ふん)
・肥料ついては、以下の記事で詳しく説明しています。
肥料の三要素・種類と効果。ぼかし肥の作り方
③畝作り
土を盛り上げて幅60cm、高さ10cmで畝を作ります。
2.食用菊に適した土づくり(プランターの場合)
①栽培用鉢植え・プランター
8〜9号の鉢植えかプランターで栽培をします。
食用菊は根を良く張りますので、深めの鉢植えを用意します。
[itemlink post_id=”2593″]
②プランター栽培用の土
市販の元肥・pH調整済みの野菜用培養土を使用すると楽に栽培ができます。ホームセンターなどで十分な量の土を購入しましょう。
水はけを良くする為に、鉢植えの底に石を敷き詰めたあと、花培養土を鉢の7分目あたりまで入れて用意します。
赤玉土や腐葉土、ピートモスなどと配合した土にすると、さらに水はけが良い土となり成育が良くなります。
[itemlink post_id=”2594″]
菊の栽培用に配合した土となりますので、元肥などを混ぜたりする必要もなく、そのまま使用することが可能です。
③以前使用した土を再利用する場合
他の野菜を育てた使用済みの土などを再利用して使う場合は、土を消毒してリサイクルすることができます。
リサイクル材を使用すると便利です。
・プランターで使用した土の再利用方法については、以下の記事で詳しく説明しています。
プランターで使用済みの土を再利用するリサイクル方法
3.食用菊の植え付け
ポットから苗木の取り出して、根鉢を崩さないように植穴を掘って埋めます。複数植える場合は、株間20〜30cmの間隔で植えます。
植え付けが完了したら、土の表面を手で少し圧着してジョウロで水やりを行います。
苗木を親株として育てて、挿し芽として株を多く育てる方法
苗木をそのまま植えずに挿し芽として育てる場合は、側芽の葉が5枚程度のものを5cm程度で摘みます。
下の方から葉を2枚ちぎって、先端から3枚程度の挿し芽にしたら、水に2時間程度浸しておきます。
10cm程度の間隔で2cmの深さで土に挿し芽を挿すように植えていきます。
挿し芽は陽が十分に当たる場所でトンネル栽培で栽培します。約10日程度で根が張りはじめますので、乾燥しないように水やりをして管理しましょう。約1ヶ月程度で定植できる位の大きさまで育てます。
4.水やり

根腐れなどを起こさないように、土が乾いたら適度に水やりを行うようにします。
あまり水やりをしすぎて常に土が湿った状態が続くと、根腐れの原因となりますので注意が必要です。
また、蕾がつき始めたり、開花の時期は水を切らさないように水やりを行うようにしましょう。
5.支柱立て
7月の中頃に鉢もしくは地植えした土に、100〜120cmの支柱を1本立てます。
2〜3株の菊をまとめて紐で支柱と縛ります。
6.肥料/摘心
植え付けから1ヶ月経過したら、株元に化成肥料30g/㎡(軽くひと掴み程度)、もしくは液肥を施して株元に土寄せします。
液肥の場合は、液肥のパッケージ表記をよく読んで施します。
9月上旬まで1月に1度の程度のペースで追肥と土寄せを行います。
1度目の追肥時に芽先の先端を1cm程度摘み取って摘心を行い、わき芽の成育を促します。
周りの雑草もこまめに取り除いておきましょう。
7.収穫

9月上旬頃に開花をしてきたら、収穫のタイミングです。
開花した菊の花を丁寧に1つひとつ花芽をハサミで摘み取って収穫していきます。2ヶ月程度順次花が咲き続けますので、長く収穫を楽しむことができます。
11月に入ると栽培するエリアによっては、霜にあたって花が変色してしまいますので、トンネルなどで保温します。
・収穫した花は、酢を大さじ1杯入れて沸騰したお湯で、サッと茹でて冷水に浸した後、水気を切って食用に使用します。
・この時、酢を加えて茹でることで苦みを取り、花の色を鮮やかにします。
失敗しない食用菊の栽培方法・育て方のコツ
①購入した苗木を本株として育てて、挿し芽として多くの菊を収穫することが可能です。
②開花の時期付近にリン酸を多く含む追肥を行うと、花付きが良くなります。
③水をやり過ぎると根腐れの原因となります。用土が白く乾いたら水やりを行うなど、少し乾き気味で育てると良いでしょう。
④悪天候や高温・湿気の多い時期が続くと、病気や害虫が発生しやすくなるので、発生したら初期の段階で対応や予防をしましょう。
よくある病気と害虫対策
病気
・白さび病(葉の表面が錆びた様に、白色の斑点が広がります)
対策:多雨多湿で多く発生します。
発生した株は早めに取り除き畑の外で処分しましょう。
「マンネブダイセンM水和剤」「カリグリーン」などの薬剤が効果的です。
また、アルカリ性の土壌を嫌う為、「石灰」を土壌に施すと菌の拡大を予防できます。
・褐斑病(葉に褐色の斑点が出来て、やがて枯れてしまう病気)
対策:多雨多湿で多く発生します。
発病した葉は他の株にうつらない様に、畑の外の土中に埋めて処分します。
葉が多く茂って風通しが悪くならない様に、株間を適切に取り、間引きをきちんと行いましょう。
また、プランターでは、雨が直接当たる場所での栽培を避けましょう。
害虫対策
・アブラムシ(新芽・新葉への群生により植物の汁を吸う。病気の媒介)
対策:発見次第手や筆などで払いおとし除去。アディオン乳剤、オレート液剤を使用した駆除。
・農薬を使用する場合は、収穫の2週間前までとしましょう。
・病害虫の対策と予防ついては、以下の記事で詳しく説明しています。
家庭菜園の野菜の病気と害虫対策・予防方法
連作における注意
食用菊は連作障害がありませんが、連続して同じ土で栽培すると病気になりやすくなる為、鉢などで育てる場合には土を変えて育てる様にしましょう。
食用菊の種類
主な食用菊の種類
・阿房宮(あぼうきゅう)
刺身のつまでよく見かける、ポピュラーな中輪種の黄色い花が咲く品種の食用菊です。
・もってのほか
大輪種で桃色の花が咲く品種の食用菊です。
・延命菊
大輪種で桃白色の花が咲く品種の食用菊です。
まとめ
食用菊の育て方として、水をやり過ぎず、肥料を切らさずに栽培することがポイントになります。開花時期も長く多くの収穫が楽しめます。手軽に食用菊の栽培を楽しみましょう。

MAKI
埼玉県南中部に自らの畑を持ち休日に農業を行う。農薬を一切使用しない無農薬栽培歴は今年で8年。年間20〜30品目の野菜を栽培。